離婚するには、子どもの親権や養育、財産分与などの問題を解決しなければなりませんが、住宅ローンの問題もその一つです。
このようなメール相談があります。
「離婚するにあたり、連帯保証人を外すことなく持ち分を相手に譲渡し名義変更したのですが、保証会社には連絡しませんでした。それから13年経ちましたが突然、元夫の弁護士からマンションを任意売却し自己破産することになったという話がきました。
そこで質問です。任意売却は連帯保証人の許可なくできるのでしょうか?勝手に売却したことを理由に支払いを拒否できるのでしょうか?」 (埼玉県)
離婚するにあたり住宅ローンからも離脱したいという人がいますが、そこにはいくつかの難題があります。
住宅ローンからの離脱を考える場合、まずは現在のローンがアンダーローン(自宅の売却価格がローン残を超えている)か、オーバーローン(ローン残が売却価格を超えている)かを確認する必要があります。
アンダーローンであれば、自宅を売却してローン残を返済し、残った売却益は両者で分配すれ問題はほぼ解決でしょう。
問題はオーバーローンの場合です。
共有名義で購入した自宅の担保権や連帯保証などをを外すことは容易ではありません。
まずは連帯保証ですが、夫婦間で保証人から離れる契約はもちろん有効です。しかし債権者には、債権保全上、それは受け入れられません。
担保権を外すことも同じです。債権を保全するための担保権なのですから。
ただし例えば、債権保全に十分な担保物件や連帯保証人を新たに提供できるなら、債権者に応じない理由はありません。しかしそれは債務者には現実的な話ではないでしょう。
共有名義を単独名義に変更することも債権者は認めません。そもそも共有名義ということは、単独では収入が足りないため夫婦合算の収入でローンを組んでいるからです。
ただし例えば、ローンの切り替えができるなら名義変更も可能でしょう。
メール相談の共有名義の物件を単独で売却したり、連帯保証人の許可なく売却すrことはどうでしょう。
前者です。共有物件の処分(売却を含む。)には、所有者全員の同意が必要ですが、相談者は持分を譲渡しているのですから問題はないでしょう。
後者ですが、連帯保証契約は債権者と保証人間の契約ですから、売却に債務者の許可はいりません。
ただし債権者(銀行など)は、連帯保証人のクレームを避けるため、担保保存義務免除特約」を借入契約に付けたり、売却にあたり「担保権解除同意書」を連帯保証人に求めたりすることがあります。
以上のように、婚姻後に共有名義で購入した自宅の住宅ローンから離脱することは難しいです。
しかし、オーバーローンの自宅であっても売却してローンの負担を最小限にすることはできます。任意意売却です。
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった場合に、債権者の同意をえて自宅を売却することです。連帯保証人などがいてもできます。
任意売却ができれば、住宅ローンの負担を減らせるだけでなく、担保権や名義変更などの問題も解消することも可能になります。
最後に、離婚にともなう財産分与に触れておきます。
婚姻後に購入した自宅は、単独名義であっても財産分与の対象になり、住宅ローンがある場合は自宅と残債を合わせて分与することになります。
なおオーバーローンの場合、裁判所は「自宅は無価値であるため財産分与の対象にならない」としますから、住宅ローンは自宅の名義人が引き継ぐことになります。
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